天邪鬼











「失礼します。市丸隊長、書類をお持ちいたしました」
「ん、入ってええで」

ここは護廷十三隊三番隊詰所。
今、イヅルが昨日もサボって仕事を遅れさせたギンに、書類を持っていく。
はというと、執務室近くの部屋の、自分の机で報告書を書いていた。
「::::!!」
「::::〜」
「あ〜あ、またやってるみたい・・」
耳を澄ますと、二人の言い合いが聞こえてきた。
「市丸隊長!手が一向に進んでいないじゃないですか!!」
「仕事つまらんのやもん。もうボク嫌やー」
「つまらないなんて理由になりません!!」
「イヅルのケチ〜!」
「ケチで結構ですっっ!!!」


「厭きないなぁ」
は二人の喧嘩を聞きながらも、せっせと手を動かし、報告書を書き終えた。
「よ〜し。あとはこれを副隊長に見せて・・・」
その瞬間、突然後ろの執務室への障子が開き、イヅルが入ってきた。

「いいですかっ!とにかく、これを2時間以内に終わらせておいてください!!
 終わってなかったら、もう 君と一緒に異動願い出しますからね!!」

「ほへ??」
何故隊長と副隊長の口喧嘩に自分の名が出てくるのだろう?

「それはいくらなんでも、許さんへんよ、イヅル!!」
ギンが とイヅルがいる部屋と、執務室の間の廊下に立っている。
「なら、きちんと仕事をしておいてください!」

ピシャっと、イヅルはギンを中にも入れず、勢いよく障子を閉めた。
「そない言うんやったら、やったるわ!イヅルのバカっ!!」

障子の向こう側で、ギンが勢いよく障子を開いて、また閉めた音がよく聞こえた。
「まったく、市丸隊長は勝手過ぎるんだ!」
イヅルはらしくもなく、壁にドンと横から拳を当てた。
そんなイヅルに、 は控えめに声をかける。
「・・副隊長?」
イヅルはたった今 に気付いたかのように、ちょっと驚いた顔をした。
「あ。・・・・ 君。もしかして、今の見てた?」
「えと・・・、はい。すみません」
あれだけ大声で怒っていたのに、気付かない方がおかしい。
「そっか・・。みっともないところを見せちゃったね」
「いえ、そんなことないです!むしろ申し訳ないくらいです!」
「あ、そっか。 君は市丸隊長と・・・・」

その通り。
はギンの恋人なのだ。

ギンが仕事をサボったり、イヅルに迷惑を掛ける度に、 は申し訳のない気持ちになった。
昨日のことも、朝イヅルに謝ったばかりだった。
今日こそは、ギンにガツンと言って、もうイヅルに迷惑を掛けないようにしなければならない。

「別に 君の所為じゃないよ!」
「はい、ありがとうございます。でも、ギンには私からよく言っておきますから」
「あ、うん・・」
は先程書き上げた報告書をイヅルに渡し、ギンのいる執務室へ向かった。






「失礼します、市丸隊長。お伝えしたいことがありますので、中に入れて頂けないでしょうか?」
「・・・・・」

返事が、ない。

「市丸隊長?」

居眠りでもしてんのかな?

は返事がないことを不思議に思い、思い切って障子を少しだけ開けてみた。
「ギン・・?」
そこで が見たものは、なんとも珍しい光景だった。

「・・・」
ギンの机に大きく積まれた、書類。
一枚一枚目を通して、それにスラスラと筆を這わせていくギンの姿。

嘘・・!ギンが、仕事してる!?

は一瞬目の錯覚かと思った。
は、目を死装束の袖でゴシゴシと擦った。

擦ったあとで、またギンを見る。

やっぱり仕事してる!!

は今度は夢かと思った。
は、右頬を思い切り抓って・・・
「あいたっ!」

夢じゃないし!!

とにかく、ギンが真面目に仕事をしている様を見るのは、初めてかもしれない。
は障子から背を向け、
「あれってギンの偽者かも・・・」
などとまで思案している。

、こないなトコで何しとるん?」
「ぅきゃぁっ!!」

突然少ししか開いていなかった障子が全開になり、 はギンにまんまと見つかってしまった。
「なんやの、そない驚かんでもエエやん」
の悲鳴に、ギンの方が驚いたようだ。
ギンは「あぁ、ビックリしたわ」などと言っている。

そんな中、 はここにいた理由を聞かれないように、言葉を探した。
「あ、そうだ・・。ギン、仕事してたんだね」
「ん?あぁ、イヅルにメチャクチャ言われたで、腹立ってしもてな」
どうやらギンまで、あの場に がいたことを気付かなかったらしい。

「ここは見返したろう思て、必死にやっとったトコや」
「副隊長、だいぶ怒ってたからなぁ」
「イヅルは堅すぎるんや。若い方なんに、あれじゃすぐ老けるわ」
ギンの言い様に、 は苦笑した。
だが、ガツンと言うと決意してきた以上、ギンに言わなければならなかった。

「ねぇ、ギン。やっぱこうやって毎日、ちゃんと仕事した方が良いと思うよ?」
までそないなこと言って・・」
ギンは拗ねた子供のように、つーんとそっぽを向いてしまった。
「ギンは天邪鬼すぎるんだよ。あんなんじゃ、副隊長が可哀想だよ?」
今の の言葉に、ギンの耳がぴくんとした気がした。
は・・、イヅルの味方するんか!」
「ち、違うよっ!」
はこのままでは喧嘩になると思い、すぐに否定した。

「何も違わへんやん! はボクよりもイヅルが大切なんやろ!!」
「ギンッ!違うよ、私は・・っ!!」
その瞬間、


「なーんて、ボクが言うとでも思っとるん?」


ギンは の細い両肩を掴み、引き寄せた。
そして

「えっ!?ぎっ・・んっ。・・ふぁ・・・!」


ギンは の唇に自分のそれをあてた。

「・・んっ・・んんっん!!」
は必死にギンの胸を叩くが、ギンはその細い手首を取り、近くの壁に縫い付けた。
解こうにも、ギンの力のほうが圧倒的に強すぎて、 の腕の方が折れてしまいそうだった。

壁に追い詰められ、 はギンの口付けにされるがままとなった。
最初は長く唇をあて合っていたが、暫くして息が持たなくなり、 は口を少しだけ開けた。
それに目を細くして笑ったギンは、すかさず自分の舌を の口内に入れる。

「っっ!!ふぁ・・・っん・・!」

ギンは の口内で舌を蹂躙させた。
歯列をなぞってみたり、強く の舌を吸ったりして、メチャクチャにした。

「・・・・はぁ・・っ」
やっとギンの唇から解放された は、羞恥で顔を真っ赤に染めていた。
二人の間は、口付けの余韻である透明な糸で繋がっている。
「・・ がボク以外を好きになるなんて、ありえへんもん」
ギンはそう言って、長い口付けの余韻を、口端から舐め上げた。

その妖艶さに、 は思わず見惚れてしまった。

そのすぐあと、ギンは の首筋を舐めた。
「ぎっ、ギンっ!」
は制止の声を上げたが、時既に遅し。

ギンは の首元に顔を埋め、鎖骨の周辺にいくつも朱色の花を散らせた。

「・・・ぎっ・・ん・・・!」

の手は壁に縫い付けられたままで、どうすることも出来なかった。
ギンはそれを楽しむかのように、 の目に溜まった雫を舐め取った。

「可愛えなぁ、 は。ほんま、こんなんやったら余計に・・」

ギンは左腕一本で の二本の手首を抑え、右手を自由にした。

「ギ・・ン・・・?」

その右手を、 の死装束の隙間に入れた。

「ギンっ!ダメだよ、やめて!」

ギンは の声に耳を傾けず、 の胸を揉み始めた。


「イヅルにだって話させたくなくなるわ・・」


「・・・やっ・・!だっ・・め・・」


「好きや・・

そう言って、ギンは再び の唇を奪った。



が、



「市丸隊長、失礼しまっ・・・」


「「あ。」」


運の悪いことに、イヅルが室内に足を踏み入れていた。


「・・・イヅル・・?」

君が帰ってこないと思ったら、こういうことですか!!!」
「ふ、副隊長!?」
は乱れていた死装束を整え、イヅルに弁解しようとした。

「ふくた・・っ!」
「本当に貴方という人はっ!!」

無駄だった。

「あー、もう、イヅルのド阿呆!ええトコやったのにっ!!」

「ギン、少しは動揺しようよ・・」

「とにかく、市丸隊長!今日という今日は、もう許しません!!!」


イヅルは斬魄刀に手を掛け、ギンに詰め寄ろうとした。

っ、行くで!」
「え?」
ふいにギンは の手を取り、窓から逃走した。


「市丸隊長っっ!!」


「ちょ、ちょっとギン!!」
「イヅルのおらんトコやないと、ゆっくりでけへんやろ?」

が止めても、ギンは笑みを貼り付けたまま、イヅルから逃げる。
「市丸隊長ーっ!!」
イヅルも必死で、ギンに追いつこうと疾走してきている。






っw」

「え?」

はボクんこと好き?」

「す、好きに決まってるじゃない!」

「ほんなら、えーけど・・」

「えーけど?」

「もし、ボクの他に好きなヤツなんか出来たら、さっきみたいなんじゃ許さへんよw」

「・・大丈夫だよ、ギン」

「・・?」

「私は、誰よりもギンが一番好きだから」

「・・おおきにw」



私の愛しい貴方は まるで 



天邪鬼



とっても意地悪で とっても嫉妬深い 

どうしようもないくらい 我侭な人 



でも、とっても貴方を



愛しています







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