自分自身が 

 嫌で嫌で 

 仕方なかった 









 「恋する男に祝福を」 








 西野は不機嫌だった。
 明らかにオーラが違った。
 収録でさえも、それは分かる程。
 つっこみを入れられた板倉は、後にこう語る。




 板倉「あれは人を殺るオーラだった」(ぉ)




 収録が一時終わり、西野は用意された楽屋に戻った。
 しかし、数分もせぬ内に、楽屋から出て行った。
 入れ違いざまに、相方である梶原が入ってきた。
 一瞬、目が合ったが、西野の足は止まる事はなかった。

 次の収録まで大分時間がある。
 胸の中は、むしゃくしゃしている。
 西野は、小さく舌打ちをすると、テレビ局の玄関から勢い良く飛び出した。
 人通りは余り多くはなかった。
 夕食時近くだったので、家路を急ぐサラリーマンの姿ばかりが目立つ。
 西野は走り続けた。
 だが、一向に苛立ちは治まらない。
 テレビ局を一周し、西野は局内に戻った。

 まだ時間がある。
 楽屋には戻らず、ロビーのソファーに向かった。

 こんなに腹を立てたのは何時以来だっただろうか。
 そもそもの発端は、相方である梶原の言葉であった。
 収録の合間、嬉しそうに共演者の堤下に話した言葉。




 梶原「ちゃんと飯食いに行ったんスよ〜ww」




 馬場達と話をしていた西野の耳に入ってきた。
 些細な話。
 西野も気にしないように努めていた。
 だが、梶原の嬉しそうな表情が頭から離れず、次第に苛立ち始めていった。

 そして、今に至る。
 肩に掛けたタオルで、汗を拭う。
 ソファーには先客がいるようだ。
 近づいていくと、その人物が誰なのかが見えてきた。
 西野は足を止めた。
 目の前にいる人物を直視出来なかった。




 「西野さん?」




 西野の心臓が高鳴った。
 表情に出さず、いつものように笑顔で駆け寄った。




 西野「ちゃんやんかww何?仕事?」




 ソファーに腰掛け、西野は笑顔を見せた。
 も笑顔だった。
 その笑顔が、西野の心臓を締め付ける。




 「はい(^v^)雑誌の撮影で。西野さんは?」

 西野「はねるの収録や(笑)」

 「はねるのですか(笑)今もやってるんですか?(=^-^=)」

 西野「あ…ああ、そうやな…まだやってるわ」

 「どうかしたんですか?」

 西野「いっいや、何でもないι」




 言葉とは反対に、西野の頭の中は、混沌としていた。
 例えるならばマーブル。
 様々な色が混ざり合っている。
 そんな気持ち。

 フと、西野は思った。
 この気持ちを吐き出してしまえばいい、と。
 西野は、ゆっくりとした口調で言った。




 西野「梶と…飯行ったて、ほんまなん?」




 表情には出さなかった。




 「はい…行きましたよ?」

 西野「…」




 無言の西野。
 は、その意味に気付いた。
 それが分かると、何だか急に笑いが込み上げてきた。
 小さく笑うを見て、西野は唖然とした。




 西野「笑うとこやった?」

 「西野さんって…可愛いんですね(笑)」

 西野「はぁ?!ι可愛い?!」




 思ってもみなかった言葉に、西野の声は裏返ってしまった。
 それを聞いたは、更に笑う。




 「トロメラのメンバーやスタッフも一緒でしたよ?(笑)」




 その言葉を聞いて、西野は顔を赤くさせた。
 自分が思っていた事を悟られていたのだ。
 それならばと、西野は思い切って言った。




 西野「梶だけやと、ずるいから、俺とも一緒に飯食いに行こうな」




 は、笑いながら首を縦に振った。




 西野「二人っきりで、やで?(笑)」

 「…考えておきます(笑)」

 西野「何やねんっ!それっ!!(´ヘ`;)」




 西野の気持ちは晴れていた。
 すっきりとしていたのだ。
 胸のわだかまりが取れたとは、まさに、こんな事を言うのだろう。
 去り際に、は西野に聞こえるか聞こえないか分からないような、小さな声で言った。




 「西野さんと会ってる回数の方が多いんだけどな(笑)」




 それは、バッチリ聞こえていたようで(笑)
 西野は、鼻歌を歌いながら収録へ向かった。
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