私は、ずっと一緒にいたかった。


















「 いってらっしゃい 」







































「これで、さよならね。」


自嘲気味に笑い、目の前の薬売りを見た。


「そう・・・ですね。」


まったく、一度は好きになった女と別れるのよ?


少しは・・・。


否、この男は一度も私を好いてはいなかったのかも知れない。


だからあっさりと―――私が必死に繋ぎ止めようと―――していた縁を、断ち切った。


「ねぇ、一度でも私の事を好きでいてくれた?」


薬売りの唯の一度も揺れた事のない瞳を真っ直ぐに見つめた。


やはり何時も通り静まりかえっている。


「いいえ・・・。」


やっぱりね。


やっぱり好きじゃなかったじゃない。


まったく私は何を期待してたのかしら。


予測通りの言葉に小さな笑いが込み上げてきた。















「俺は・・・今でも を、愛してる。」


「っ。」


息が詰まる。目が熱くなる。


どうして?


どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして?


どうして、最後にそんな言葉を私に向かって告げたの?


「ど、して?別れ、るん、だよ?私達。」


涙が後から後から溢れる。


「大切だから・・・別れるん ですよ。」


不器用な優しさ。


そんな私達をお月様は優しく照らしている。


が・・・大切だから、こそ。傷付けたく ないん ですよ。」


私は、薬売りが大切だからこそ傍にいて支えてあげたかった。


薬売りは、私が大切だからこそ自分の傍に置いておけなかった。


「もう・・・。そ、なの。言って、くれな、きゃ・・・分かんない、じゃな、い。」


また涙が頬を伝う。


でもさっきの様に、悲しみや絶望からではない。


「私、一緒にいたい。」


「しかし・・・危険ですぜ?」


薬売りの瞳が一瞬、揺れた様な気がした。


「そんなの、構わない。私は薬売りの傍にずっといたい。」


・・・。」


だって、


「だって・・・。私も薬売りの事、愛してるから!」


そう言い放って、薬売りの唇を奪う。


その刹那、一陣の大きな風が音を発てて駆け抜けていった。


「でも・・・だからこそ薬売りの困った姿は見たくない。だから・・・待ってるわ。」


気を抜いたら、泣き出しそうで。


必死に唇を噛んで耐える。


きっと今。鏡を見たら、くしゃくしゃな最悪な顔なんだろうな。


「何時まで掛るか・・・分からないん、ですよ?」


「何時まででも待ってる。何年、何十年経っても。」


だから・・・。


  

(出来るだけ早く帰って来なさいよ。)(はい。)(死んじゃったりしたら、許さないんだから。)(はいはい。)























びゅうっと一陣の大きな風が吹いた。


まるで、あの時の様な風だ。


風に飛ばされた黒髪を手で押さえて振り返ると


「っ!・・・遅いわよ。馬鹿。」






































終わり








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