「 お祭り 」














































旅の途中、そろそろ陽が落ちるであろう時分。


ある村に丁度着いた。


「わぁ!賑やかね。」


の言葉の通り、村は賑やかだった。


村人達の笑い声が響く。


子供達は風車やお面を持ち、走り回っている。


更に周りを見渡せば、若い男達が御神体を担いでいた。


どうやら祭りが行われている様だ。


は嬉しそうに顔を綻ばせ近くにある木に手を触れさせた。


「この村・・・ちゃんと神様を祀ってる。いい村ね。」


にこりと笑い、薬売りに言う。


「そう・・・だな。」


どうやら薬売りもこの村の空気が良い事に気付いていた様だった。


村の空気が良いという事は、怪の類が出難いということ。


「今日はゆっくり出来そうね。」


はほっとしながら嬉しそうにそう呟いた。









宿に着き、部屋を一部屋取るとその宿の女将が


「今日はこの村のお祭りがあるんですよ。もし良かったら行って来たらどうですか?」


と言ってきた。


その言葉には目を輝かせ薬売りを見る。


「行きたいん、だろ?」


その言葉にぶんぶんと勢いよく頭を立てに振る。


そんな様子のに女将はにこりと笑いながら言った。


「ふふ、それじゃあ浴衣をお出ししますよ。」


その女将の好意に甘え、女物と男物の浴衣を借りる。





「まだ、か?」


「ちょっと待って!」


先に着替え終わった薬売りは、部屋の外でを待つ。


それから少し経ってやっとのことでが出てきた。


「お待たせ。」


気恥ずかしげにそっと出てきた


「・・・。」


「ちょっと・・・何か感想とかないの?」


黙ってしまった薬売り。


それは、のあまりにも美しい姿に見惚れてしまったから。


いつもと違い、高い位置で一つに括られている髪に青の落ち着いた色の浴衣。唇には赤い紅。


すっと薬売りはに近付くと耳元で


「綺麗だ・・・。」


と一言。


「っ。」


引き際にちゅっと首筋に痛みが走ったかと思うとの首筋には一片の華が咲いていた。


「なっ!何すんの?!」


「あまりにも・・・綺麗、だったからな。」


「変態。」


「男は・・・皆、そんなもの、だ。」


薬売りはにやりと笑ってそう言うとすっとに手を差し出した。


その手を苦笑しながらも掴み、二人は祭りへ足を運んだ。










「うっわぁ。賑やか。」


夕方、この村に着いたときよりも更に賑やかな村。


ぼんやりと光る提燈に艶やかな色の浴衣に身を包んだ村人達。


あまり大きくないがその祭りは、賑わっている。


「こんな穏やかな夜は久しぶりね。」


ふと薬売りにそう言うと薬売りも優しく微笑み同意の言葉を述べた。




「あれ?」


繋いでいた手が突然、離れた。


人の波に押されその場所からどんどん流されていく。


「ちょっと、やだ。」


気付いたときには、賑やかな祭りの場所より少し外れた場所。


「はぁ・・・どうしよう。」


困った様に呟けば、それは静かな空気に溶けていく。


折角綺麗に着飾った姿も人ごみのせいで少し崩れている。


「最悪。折角、綺麗にしたのに。薬売りさんとも逸れちゃうし。」


ゆるゆると座り込み顔を自分の腕に埋める。


「早く・・・迎えに来てよ。」


ぱしっと手を掴まれた。


びっくりして顔を上げれば、息も絶え絶えに汗をかいている薬売りの姿。


「うわっ。」


立ち上がるとはぎゅっと薬売りに抱き締められた。


「何処に・・・行ったかと、思って・・・探した。」


耳元で荒い呼吸が繰り返されるのを感じながらは小さな声で


「ごめん。」


と一言もらした。










手をぎゅっと今度こそは離れない様にと繋ぎ歩き出す。


祭りも終わり、静かな村。


「今日は・・・散々だったね。」


苦笑しながらは言った。


その時、薬売りがぴたりと立ち止まる。


「?・・・どうかした?」


ふわりとの眼の端に光が映る。


その瞬間・・・。


「っ。」


一斉にその光が天へと上って行く。


「綺麗・・・。」


「そう、だな。」


ふと薬売りとは目が合うと笑いあい、どちらからということもなく。


お互い惹かれる様にして唇を重ねた。


そんな二人を蛍の柔らかな光が包んでいるのだった。
































  

「散々じゃなかったね。」「ああ。」「素敵なお祭りだったわ。」


































あとがき


リクエスト第二弾!梨乃様のリクエストで「薬売り夢」でした!


本当に本当にごめんなさい!かなり遅くなってしまいました。


そして、とてつもない駄文で・・・。


こんなものでよろしければ、梨乃様のみお持ち帰り下さい。


それでは。







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