新たな出会い。久しぶりな出会い。
『 宵月〜モノノ怪 海坊主〜序の幕 』
ざざん、ざざん。と波の音が絶え間なくする。
今、と薬売りは船の上にいた。
「はぁー、潮風が気持ち良いーっ!」
ぐぐっと背伸びをして、は潮風に当たっていた。
の長く黒い髪が風によってさらさらと流れていく。
「風に 当たりすぎると・・・身体に悪いぞ。」
「あわっ。」
後ろから突然、誰かに抱き締められた。
もちろん、その誰かとは薬売り以外の誰でもないのだが・・・。
「ねぇ、百歩譲って抱き付かれてる事は無視してあげる。でも、この手はなぁに?」
そう言って、自分の胸部にある手をぎりりと抓る。
「痛てて・・・。」
別段痛く無さそうな声が後ろから聞こえ、はじろりと薬売りを睨み付けた。
「自業自得だっての!隙在らば触ってきて・・・!」
「それは・・・が 可愛い反応を するから な。」
耳元で何時もよりも低めの声で囁く。
「っ・・・!わ、わ、わ、私が耳弱いの知っててやってるんでしょ?!?」
顔を真っ赤にさせ、耳をがばっと両手で隠しながら叫ぶ。
「さぁてね・・・。」
意味有り気な微笑みを浮かべながら薬売りは歩きだした。
「あっ、こら!逃げるな!!」
しばらく船内を歩いていると聞き慣れた声がした。
「もしかして・・・この声って?」
がそう呟いた時、階下から一人の男の声がした。
「まだ、客人がいたようだな。」
「ん?あぁー!!薬売りさんとじゃないですかぁ!!」
聞き慣れた声とは、加世の声だったのだ。
「あの人が坂井の化猫騒動を鎮めたんですよぉ!!」
「加世ちゃーん!久しぶりだね!」
手をひらひらと振って笑顔をでは言った。
その瞬間、加世は笑顔で手を振り返し。他の男はそのの笑顔に心奪われ。薬売りは不機嫌そうに眉を寄せた。
「んっごほん。・・・あんたらも呪術者の類か?」
「只の・・・薬売り ですよ。」
「私は単なる旅人ですよ?」
と薬売りは階下に降り、加世達と合流する。
「えぇと・・・。お名前をお伺いしても宜しいですかね?」
この船の所有者である男が遠慮がちに問うた。
「私は、と申します。」
「そちら様は・・・?」
「薬売り・・・と。」
「そうですか。私は三國屋多門と申します。」
そして一人一人、名を名乗っていった。
は、加世に近寄り声を掛けた。
「本当に久しぶりだね!元気にしてた?」
「〜!うん、元気だったよ!」
二人は、手を握り合いきゃっきゃっとはしゃいでいる。
「本当・・・すごい偶然だよね!」
加世の言葉には妖笑を一瞬浮かべ誰にも聞こえぬ様、呟いた。
「偶然・・・ね。」
「えっ?」
「うんうん、何でもないよ?」
次の瞬間には、何時もと変わらぬ明るい笑顔になっていた。
「そういえば・・・怪とかが出たら薬売りさん。また退魔の剣で斬るんですか?」
「どうして?」
「ど、どうしてって!だって!」
「怪とは、此の世ならざるモノのこと。」
「怪はね。八百万もいるのよ?そんなのを片っ端から斬ったってきりがないの。」
は、眉を八の字にして困った様に笑う。
「えっ?八百万は神様の数でしょう?」
「同じ様なもんだ。」
薬売りの言葉に、加世は「え?」と不思議そうな声を上げた。
「でも、物の怪は違うの。」
と薬売りは、何も無い筈の場所を何かを見る様に眺めている。
二人の眼には、何が映っているのやら。
「お主の・・・その退魔の剣なるもの。ちと抜いて・・・見せてはっくれまいかっ?」
「わかめ?」
ばしっ。
「っっ!!!!!」
の呟きを聞いた薬売りは何時もどおり思い切りの頭を叩いた。
「叩いた!また叩いた!!馬鹿になったらどうしてくれんのよ!!」
の言葉を綺麗に無視して声を掛けてきた男を見ている薬売り。
「抜けません。・・・こいつを抜くには物の怪の形と真と理が必要なんですよ。」
薬売りの言葉にその男は何かを言いたそうだったが、しぶしぶといった感じで何も言わなくなった。
「ふー夜風が気持ち良いねぇ。ただ・・・何か起こりそうだけれども。」
その時、ふと風が止んだ。
「風が・・・止んだな。」
それと同時に嫌な空気が漂ってくる。
「まったく・・・また厄介な事がありそうな予感。」
は、眉を顰め面倒だと言いたそうに溜息を吐いた。
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あとがき
海坊主!やっと海坊主編です!
今回は、あんまり薬売り以外のキャラと絡んでないので次こそは幻ちゃんと!
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