今回は・・・何が出るのかな?















































































『 宵月〜モノノ怪 海坊主〜序の幕 』













































































「なーんだ!皆ここにいたんですかぁ!もう皆どこいっちゃったのかと思ってぇ〜。」


加世の元気な声が船内に響いた。


「あ・・・あの。どうかしたんですかぁ?」


「おはよう。加世ちゃん。」


は、困った様な笑顔を浮かべて加世に声を掛ける。


、おはよ!で、どうしたの?」


「あぁ・・・どうということはっ・・・。」


三國屋が言いづらそうに言葉を濁す。


「とうに朝だと言うのに一向に朝日が出てこない。・・・にも関わらずぼんやりと明るい。」


そこに幻殃斎が言葉を挟んだ。


「もう朝ぁ?」


「うん、なのにまだ朝日が出ない・・・。」


「えっ、何で・・・?」


薬売りとは意味有り気に目を合わせた。









全員で階下まで降り、下の羅針盤を覗く。


「ねぇ、やっぱり・・・誰かがこの船に細工をした?」


「まぁ・・・そう だろうな。」


加世、三國屋、幻殃斎、五浪丸が見ている時、小声で話す。


「あの羅針盤の下・・・何かあるね。」


がそう言うと、羅針盤に薬売りは近付いて行き加世達にそのことを説明した。


はそれを一瞬見やると、階段を上っていく。


「何を熱心に彫っていらっしゃるのですか?」


「・・・。」


上に行くと木を彫っている兵衛に声を掛ける。


「じゃあ・・・何故江戸に?そんなに血の臭いをさせながら。」


「?!」


かちゃっと刀に手をのばす。


「やめた方がいいですよ。私は斬れません。」


にこりと笑うに毒気を抜かれた様に兵衛は刀から手を放した。


「何故・・・分かった?」


「昨日・・・貴方に一瞬触れた時、見えてしまいましたから。」


しれっと言う。


「見えた?」


「ええ、見えたんですよ。とても気持ちの良い物じゃあありませんね。」


ふぅと溜息を吐いて兵衛の隣に座る。


「それは、その人達への償いのつもりですか?」


兵衛の木彫りを指しそう問う。


「・・・。」


「まぁこれから気を付けて下さい。因果応報と言うでしょう?」


「っ。」


兵衛はの冷笑に息を呑んだ。


綺麗でいて恐ろしい。まるで触れてはいけない神の様な・・・。


「・・・まったく面倒ね。」


は、そう呟くと立ち上がり薬売りの元へと戻っていった。


「あっ。」


その時、兵衛も気付いたようだ。


只ならぬ気配に。










「へぇ、竜の三角・・・ね。」


「そうだ!怪の海でもある。・・・なぁに大丈夫だ!そなたの事はこの私が守ってやる!!」


の肩を抱き扇子を口元に当て笑う幻殃斎。


「それはそれは。しかし の事は・・・私がいますので。ご心配には 及びませんぜ。」


それとなく薬売りはを奪還し、自分の後ろに守るように移動させた。


その行動には、一瞬吃驚した様に口を開けそしてくすりと小さく笑った。


「もしかして嫉妬ですかぁ?」


「・・・。」


が面白そうに笑い掛けると薬売りは、何も言わずにから離れていった。


そんな薬売りにまたは、くすくすと笑った。


その時。太鼓の音が船内に響き渡った。


その音に幻殃斎は関心した様な声を上げ、加世と三國屋は恐怖した声を。と薬売りは何も言わずに上を見上げた。


「成る程。これはあれだ。虚空太鼓という怪だ。」


「あっああああ怪?!」


加世がどもりながら言う。


「大丈夫、ただ太鼓の音がするだけで人に危害を加えるものじゃないわ。」


「ほほほんとに?!」


「うん!・・・今はね。」


加世はの言葉を聞き安心した様に息を吐き出した。


どうやら最後の言葉は聞こえてなかった様だ。


「残念至極!船幽霊でも現れ様ものなら私が成仏させてやった所を!」


幻殃斎が自慢げにそう言った。


「あっ。」


が言葉を紡ぐ前にからからからと音を立てて羅針盤の針が回りだす。


がんっと船全体が揺れる。


「何事ぞ?!」


外を見やれば只ならぬ妖気が充満している。


「どうやら・・・何者かに閉じ込められたらしい。」


「えっ?!そんな・・・。源慧様、これは何者かの謀りで御座いますよね?」


「動じるでない、菖源。」


「やはりここは、竜の三角。怪の海!」


「これって・・・。」


皆がそれぞれ話す中、薬売りは薬箱を開け何かをしている。


は、その様子を只じっと見ていた。


「加世さん・・・。」


薬売りに呼ばれ加世が振り向いた。


そして薬箱の中からすーっと天秤が出てくる。


加世はその天秤の事を得意気に話し出した。


その様子を見ていたは、微笑ましそうにくすくすと笑った。















りんっと天秤が鳴った時、天空から大きな怪が降りて来る。


「こっこれが船幽霊が操る迷い舟か?!こんなに大きいなんて聞いた事ないぞ!?」


幻殃斎が驚きの声を上げる中、薬売りはいつもと変わらぬ声で呟いた。


「斬って成仏させるにせよ。江戸で見世物にするにせよ。派手な方が良いのだろう。」


「おぬしの退魔の剣とやらで斬ってはどうか?」


「だから言ったでしょう!形と真と理が必要だって!」


「その形とやらは見えてきた様だぞ。」


「えっ。」


上を見ると巨大な怪。


「ひっ!出たぁぁぁぁぁ!!!!!」


加世の悲鳴と同時に怪が船に伸びてくる。


その怪は船を覆うように周りに伸びる。


「船・・・幽霊か。」


薬売りがそう言うが退魔の剣は鳴かない。


その後、あれこれと幻殃斎達が手を尽くすが・・・。


怪は成仏される処か更に力を増していく様だ。


「やっぱり私の勘って当たっちゃうのね。」


自嘲気味には呟くとぴたりと薬売りの横に立つ。


「座して待つなら!」


兵衛は、自分の刀で怪は斬るが・・・。


「えっ?」


海草が巻きつくだけで怪は退治出来ない。


「怪に命はありません。人殺しの為の道具なんて利きませんよ。」


しばらくするとぴたりとその怪が止まった。


そして・・・がたんっとまた大きく揺れ。船が・・・持ち上がる。


船内に響き渡る、皆の悲鳴。


薬売りは、何か薬を調合し始めた。


「ふーん。」


は薬売りの手元を覗き見ると感心した様に言った。


「えぇい!なんと悠長な!!薬など尚の事怪には利かぬではないか!!」


「ああ、そうだ。幻殃斎殿は呪言者でしたね。破邪の祈祷は出来ますか?」


薬売りが思い出した様に幻殃斎に問うた。


「むっ無論だ!」


「ではお願いします。薬の調合に・・・今 しばらく 掛かりそうですので。」


幻殃斎は印を結ぶと破邪の祈祷を始めた。


「怪は・・・暗闇を伝ってこちら側にやってくる。」


「この怪道は、日の光を隠せるほど怨念が深まっているわね。」


言葉を聞いた後、薬売りの手にあった薬が球のようになる。


「目を開けていたら・・・潰れますよ。」


その言葉と共に手の中にあった球が飛んでいく。


「うわっ。」


薬売りはの眼を自分の手で覆った。


「ちょっとそんなことしなくても、大丈夫なのに。」


それとなく薬売りは、もう片方の開いた手でを後ろから抱き寄せた。


辺りが一瞬、真っ白になりそれが戻ると・・・。迷い舟は消えていた。





かしゃんっと鎖の音が次はした。


「どうしてこんな所に来ちゃったのよぉ!」


加世は半泣きになりながらに抱きついた。


は加世をよしよし。と頭を撫で嗜める。


そんな様子を見た男達は、羨ましそうだったとかそうじゃなかったりとか。


「んんっ!それはさて置き。羅針盤を細工して一体誰がこの船をここまで持ってきた?!」


幻殃斎が言う。


「この中にいる誰かがやったのは・・・確かよね。」


加世は、次々と羅針盤に細工したかもしれない者の名を挙げていく。


「ふっ、次はどんな怪が・・・現れるのやら。」


そんな時、薬売りが呟いた一言に加世は顔を強張らせた。


「えっ・・・楽しんでいるの?・・・まさか。」


そんな中、は何かを考えるように眉を顰めた。























































 































































あとがき


嫉妬薬売りさんを書きたかったのです。(何


幻ちゃんにも加世ちゃんにも取られてもやもやもやもやしちゃう薬売り。


後ろからぎゅって抱き締めたいお年頃なんですよ。(いくつだよ。)



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