人は変わるもの 時は移ろうもの 海は揺蕩うもの
同じ港を目指し 船を出したとて
見える海原 波の色
高さは それぞれ相違えるもの
あやかし モノノ怪 海坊主
人の心に闇在る限り 訪なう者は絶えずして
迎え 誘う声こそ 懼るるべし
『 宵月〜モノノ怪 海坊主〜二の幕 』
は、怖い顔をして何かを考えている加世と横になって目を瞑っているだけの薬売りを横目に立ち上がった。
「あれ?・・・何処か行くの?」
加世はぱっとの方に目を向ける。
「うん。ちょっと考えたい事があるから。」
そうは告げると階段を上がり海の見える場所へと消えていった。
ざざん、ざざんと波の音が船内に木霊する。
つぅーと赤い手すりに指を滑らせるとその場に蹲る様に座り込む。
「因果応報・・・私も人の事言えないのに。」
自嘲気味に笑う。
赤い手すりに置いてある指を自分の目の前に移動させる。
その手は白く滑らかな手。
一般的に見ればとても綺麗な手である。
「真っ赤な・・・真っ赤な手。」
忌々しげに吐き捨てられたその言葉。
ごしごしと手を擦り何度も何度も呪いの言葉を零す。
「赤い、赤い、赤い、赤い、赤い。消えないこの赤は罪の証?負わされた罰?」
には自分の手がどの様に見えているのか・・・。
その時だ。
「?!」
上から人の叫び声が聞こえてきた。
「やっと・・・動き出したのかしら。」
はすっと立ち上がると上へと繋がる階段を上って行った。
上へと行けば、もう皆が居た。
ふと空へと目線をずらせば青色の鬼火。
ずきんっとの胸が悲鳴をあげた。
「・・・。」
そんなを心配するように薬売りが名前を呼んだ。
「大丈夫。」
にこりと笑い薬売りの隣へと移動した。
「明るいのは良いが、面妖な。」
佐々木が特に驚いた様子もなくそう呟いた。
その時、霧が少し晴れ なにか がやってきた。
「なにか来る!!」
幻殃斎のその言葉に全員がそちらを見た。
そこには・・・。
べん、べん、べん。
と琵琶を鳴らしながら近付くは・・・。
「あれは海座頭だ。」
魚の様な風貌に琵琶を弾き鳴らしている怪。
「あいつは問うてくる。私の姿が怖いかと・・・。」
幻殃斎は得意気に話し出した。
「怖いと答えてはならない!怖くないと答えてやるのだ。」
「そしたら去ってくれるんでしょうか?!」
三國屋はびくびくとしながら問う。
「ん?まぁ、待て。・・・えぇ。」
幻殃斎のその態度には苦笑をして薬売りを見る。
「こんな時に、嫌な奴に会っちゃった。」
「なぁに・・・は、俺の、そばに居れば・・・いい。」
耳元でそっと囁かれればくすぐったかったのかは体を少し捩じらせた。
そっとは薬売りの手を握るとそれを自分の頬に摺り寄せて
「きっと・・・大丈夫。よね?」
誰にも聞こえぬ様に呟いた。
「船の者達に問う。ひとりひとりに問う。答えねば生きた亡者となって此の海を彷徨うであろう。」
そして問われる。
「お前が恐ろしい事は・・・なんだ!」
三國屋が問われると幻殃斎に言われた様に答えようとすると海座頭に遮られる。
「わ、わ、私がほ、ほ、本当に恐ろしいっのは!金を全て失ってしまう事でありますっっ!!」
そう答えた瞬間、琵琶が鳴り響く。
そして三國屋は体を怖がらせ何かを嘔吐するような動作をする。
べんっ。
とまた一鳴り琵琶の音。
次は佐々木に問うてきた。
「此の世に怖い物など・・・俺にはない。」
その言葉には眉を顰め佐々木を見る。
「この刀は俺の手に渡ってからは百人もの血を吸ってきた。」
かちゃりと刀に手を添える。
「一度は怪を斬ってみたかったものよ。」
そんな佐々木の後ろで加世は訝しげに
「殺人鬼かよ。ていうか、怪を斬るなんて無理だって。」
と一人突っ込みをいれていた。
それを聞いたは何とも言えない笑いをもらした。
声をあげ、刀を抜いた途端。
先程の三國屋同様、体を強張らせる。
そして豹変した様に奇声をあげると刀をかたんと落とす。
「刀が・・・。」
の呟きに薬売りもその刀を見る。
刀は音を立てて折れた。
そして・・・。
「佐々木様!」
ばたりと佐々木が倒れる。
そんな佐々木には近付こうとしたが薬売りに腕を引かれ動けなかった。
「ちょっと!」
「は・・・俺の、傍に・・・居れば、いい。」
所詮は薬売りも唯の男。嫉妬ぐらいいくらでもする。
は呆れたように溜息を吐き出すとそのまま薬売りの隣に居る事にした。
佐々木には心の中で謝っていたとかいないとか。
「女ぁぁぁ!!!」
そして次は加世だ。
「も、もう私?今は貴方が一番怖いわよぉ!でも何だろう・・・私が一番怖い事って・・・。」
うんうんと考えると
「素敵な事を一度も経験しないで死んじゃうって事が・・・一番怖い事かな。」
べんっ。
また琵琶が鳴る。
その瞬間、加世は腹を押さえて苦しみだす。
「加世ちゃん!!」
ふらりと倒れたところを薬売りが支え、が加世の手を握る。
「いっ、嫌!わたっ、し!!も、も、もう結婚も子供も生みたくない!!!」
暴れだす加世の目を薬売りの手が覆い、が優しい声色で囁く。
「海座頭が見せるのは幻。しっかりして加世ちゃん!」
が名を呼んだ瞬間、はっと意識が戻る。
「・・・薬売りさん・・・。」
べんっ。
次は幻殃斎。
そして幻殃斎が怖いと言ったものは・・・。
饅頭。
琵琶が鳴ると、幻殃斎は饅頭を美味しそうに食べる動作をする。
もちろん実際に食べている訳ではないのだが・・・。
中身を見た瞬間、幻殃斎は呻きながら海の外に嘔吐する。
一体、何が入っていたのか。
は、一瞬考えようとしたが瞬時にやめた。
べんっ。
「もう一人の女ぁぁぁ!お前の恐ろしいものは・・・なんだ!」
「私は・・・。」
―――私の恐ろしいものは・・・?
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あとがき
とんでもない所で切ってみる。
海坊主で一番書きたいところは次なんです!!
さんは何が恐ろしいのでしょうか・・・?
まぁ、その辺は次回ですよ次回 笑
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