「よって・・・皆々様の真と理、お聞かせ願いたく候。」
『 宵月〜怪-ayakashi-化猫〜二の幕 』
しんっとした室内、その中でなんとも間の抜けた声が一つ。
「おい、酒がないぞ。誰か酒を持って来い。」
やはり、皆嫌なのだろう。誰も名を上げない。
「さと・・・。」
その中で不幸にも選ばれてしまったのは、さとだった。
「はっはい!!只今!!かよ・・・行っといで!」
「えぇっ!?」
「早く!御酒だよ!場所は、わかっているだろ?!」
「いっ嫌です!私・・・」
「ならば、私が行って参ります。」
そこで、がすっと立ち上がる。
「えっ、?」
「私なら大丈夫だから、加世ちゃんの代わりに行って参ります。」
そう言い、出て行こうとすると突然。
「きゃっ。」
伊國に手を引っ張られ、倒れてしまう。
「お前は、行かなくて良い。わしの傍にいれば良いんだ。」
厭らしい笑みを浮かべ、を見下さす。
そんな伊國に睨み返す。その行動が気に食わなかったのだろう。
「なんだ・・・その目は。」
伊國が手をあげ、勢いよく振り下ろす。
は、衝撃に耐えようとぎゅっと目を瞑った。
が・・・いつまでたっても痛みがこない。
「私の連れに・・・手を出さないで頂きたい。」
恐る恐る目を開けると、退魔の剣で伊國の手を止めた薬売りの姿。
「塩がいる。ついでに酒を取ってこればいいんだな。・・・。」
「うん。」
薬売りとは、台所に向かおうと歩き始める。
「おいっ!勝手に動くな!!」
そこに小田島が、食って掛かる。
「奴は また来る。・・・その前に手を打っておく。」
「駄目だ!駄目だ!動くな、まだお前を信用した訳ではない!」
「なら、一緒に来て頂けますか?」
がそう問うた。
その言葉に一瞬、小田島は唸る。
「確かに・・・こちらとしては、その方が有難い。」
「おお!行ってやる!!残念だったな!逃げる機会が無くなって!」
そんな小田島の言葉を無視し、札を次々と剥がしていく。
「開けるぞ。」
その言葉に、小田島は怯んだ。
そんな様子を見ていたは、場違いだ。と思いながらもくすりと笑った。
「私も行きます!」
そこに、加世も加わった。
そして、ばんっと襖を開ける。
しんっと静まった廊下。それだけでも気味が悪い。
「さて、行きますかね。」
てくてくと歩きながら、は加世に声を掛ける。
「大丈夫?」
「うん・・・ちょっと怖いけど。それよりこそ大丈夫?」
「うん、大丈夫!」
にっこりと笑い、加世を落ち着かせる・・・が、一瞬表情が無くなった。
―――一瞬 『理』が見えた・・・?
そう、伊國に手を引かれた時に、断片的に何かが見えたのだ。
―――何匹にもなる猫と・・・女の人?
「何を考えている?」
「えっ?」
ふと気が付くと目の前に薬売りの端整な顔。
「っ・・・何でも、ない。」
「・・・。」
薬売りは、その言葉に納得していない顔をするが、の頭を一度撫でまた歩き出した。
どうやら、が思いに耽っている間に塩も酒も、もう取っていたらしい。
「私、御酒を置いてくるね。」
そう言って、加世は中へ入っていった。
その中でも、まだ先程の事をは考えている。
―――理は、罪も無いのに斬られた猫たちだけではないの?
―――あの女の人。どういう関係が・・・。
「また、何かを考えているな。」
「えっ、否・・・あの。」
「何を 考えている。」
真っ直ぐに見つめられる瞳。
「まだ・・・考えが私の中でも整理出来てないの。」
眉間に皺を寄せ、下を見る。
「でも・・・厄介そうなのは、確か・・・だよ。」
「そうか。」
「おいっ!!いつまでっっ塩を持たせとく気だ!!」
重そうに塩の壷を持つ小田島は、痺れを切らして二人に声を掛けた。
「しかも、何なんだ。」
「塩もご存知ないか?」
「塩ぐらい知っておるわ!!何の意味があるんだ!と聞いておるんだ。」
すーっと塩で線を引き、部屋をその線で囲んでいく。
「はったりも良いところだな!なんだ、こんなもんっ?!」
小田島が塩の線を踏もうとした時、ぱしりと扇でその足を止める。
「茶々を入れるのはいいですが・・・線を切ってはなりません。」
「線?塩のか?只の呪いだろ?」
「そうだ。信じるも信じないも自由だ。しかしな、線は絶対に・・・切るな。」
その薬売りの言葉に小田島は、声を詰まらせた。
「あの・・・手伝える事があれば・・・なにか。」
「有難い、そこの口ばっかりの木偶の坊よりはよっぽど頼りになる。」
「あ?・・・誰が木偶の坊だ!!」
「こいつを持ってくれ、加世さんは中の奴を一つずつ渡してくれ。」
小田島の言葉を綺麗さっぱり無視をして、加世に言う。
すると引き出しが一人でに開き、中から天秤がふわりと出てきた。
その天秤は、ひゅんっと加世の指に乗りぺこりとお辞儀をする。
その様子には笑い掛け、小田島に声を掛ける。
「それでは、小田島様は・・・私のお手伝いをして頂けますか?」
「あ・・・ああ。」
小田島は、緊張した面持ちでの傍まで来る。
「それでは、手を出して頂いても?」
「ん?ああ。」
その手を、は優しく両手で包み込み目を瞑る。
「?・・・何を?」
「過去を・・・読み取っているのですよ。」
「過去?」
「ええ、もしかしたら真と理の一部が隠れているかもしれない。」
数秒、小田島の手を握った後。すっと手を放した。
「何か・・・分かったのか?」
「えっ?」
「殿の・・・役に立てたか?」
その言葉に、目を見開く。
「気持ち悪くは・・・ないのですか?」
「は?・・・どういう意味だ?」
「私が・・・気持ち悪くないのですか?」
「何故だ?殿は・・・その・・・美しいとは思うが・・・。」
あたふたと「何を言って?!あ、いやその!」と言う小田島にくすりと笑うと
「ありがとうございます。こんなこと言われたのあまりないから。」
「いっいや・・・。」
「さて、戻りましょうか。」
そう言い、薬売りと加世のいる場所まで戻る。
「何だ?天秤で何を量ろうというのだ?モノノ怪の重さか!」
「距離ですよ・・・。」
「距離?!」
「モノノ怪との距離を測るのですよ。」
「距離ぃ?!天秤の何たるかも・・・いや、まぁもういい!お前が言うならそうなんだろう。」
小田島は、をちらりと見、そう言った。
「ほう・・・。」
―――いつの間にか・・・ずいぶんと 仲良く・・・。
「モノノ怪を斬ると言ったな!」
りんっと天秤が倒れる。
「ああ。」
「だったら、こんな悠長な事をしている場合じゃないだろうが!さっさと見つけ出して斬れば良い!」
その中、薬売りとは険しい顔をする。
「それが出来んと言うの・・・やはり、嘘ということか!」
「・・・言った筈だが。モノノ怪を斬るにはあと「真」と「理」が必要だ。それが明らかになるまで・・・。」
退魔の剣を見やり言う。
「この剣は・・・抜けん。」
「殿は・・・出来ないのか?」
「ええ、私が出来るのは、過去を読み取る事とモノノ怪の心を読み取ることのみ。しかも真か理が分からなければモノノ怪の心は読み取れません。」
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あとがき
二の幕、二つに切ります!
やっぱり、長すぎると読みにくいですしね。
さぁ、さんの能力が少しわかりました!
さてさて、次は・・・w
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