どうか無力な私を許して下さい。










































『 宵月〜怪-ayakashi-化猫〜二の幕 』











































「人の縁と因果が廻ってモノノ怪を為す。その「真」と「理」を聞かせてもらいたい。」


「何だ、その真と理というのは?何故話さねばならん。」


勝山が言い放つ。


「真とは、事の有様。理とは、心の有様。」


「だからなんだ!」


説明するに食って掛かる。


「何かがあり何者かが何故にか怒り怨んでいる・・・。」


「それを明らかにしない限り、刀には力が宿らずモノノ怪は斬れんという事だ。」


の言葉を引き継ぐ薬売り。


「何故に・・・か。」


笹岡が、意味有り気に呟いた。


「一つ、何故この家には猫がいない。誰かが何かを猫にしたんだ。それは何か・・・。」


「猫の怨みが人を祟るか。」


茶々を入れるように、酒を飲みながら伊國が問うた。


「そんな大層なことが、畜生に出来ると言うのか。」


「わからんよ。だが、モノノ怪は確かにいる。」


「でも、怨みって・・・。だって台所に入り込んでくるから・・・水かけたり、追っ払ったりしたけどぉ。」


ちらりと加世は、心配そうな顔をしてを見る。


「でも、だからって怨むとか祟るとかね?・・・ないよね?」


「それは・・・わからないの。」


「そんなことぐらいで?・・・、どうして?」


は、目を伏せ言う。


「モノノ怪にはモノノ怪の理があるの。それは、私たちの腑に落ちる物なのか・・・。」


「逆恨みという言葉があるように、道理や辻褄なんぞ必要ないのかもしれん。」


「そんな・・・。だって、もっと酷いことした人だっているのに!」


加世の言葉に、眉を顰める薬売りと


そして、加世はさとを見る。


「なっ何よ!」


「私、知ってるんです。さとさんが猫買ってた事!」


「猫を買う?」


その言葉に、薬売りが問う。


「あれは、お金を払っただけで何もしてません!」


「じゃあ、その猫をどうしたんですか?」


「私は知りません!猫がどうなったかなんて!弥平が全部やったんですから。」


ヒステリックに言い放つさと。


「そのお金は・・・誰のお金なんです?」


「・・・それは。」


の問いかけに、さとが口を濁す。


「別に・・・言いたくないなら。」


薬売りの問いかけに


「笹岡様ですっ!」


とさとは、言い放った。


「さっすが、色男。」


と場違いなことをぽそりと言ったの頭を退魔の剣でぽかりと叩いた。


「いったーーー!!!!」


そんなを無視して、笹岡を見る。


「笹岡様が私に猫を買い取るように言って、猫は弥平が連れて行ったから後は知りません!」


「あれは・・・いやぁ。」


「斬ったなぁ。」


笹岡の言葉を遮って、面白そうに言うのは伊國だった。


「へへへへ、なぁ?二十匹は斬ったか?」


悦の表情で言う伊國には憎悪を抱きながら睨み付ける。


「猫の皮は粘るんだ。骨は細いが皮が分厚くってなぁ?試し斬りをするには丁度良い。な?笹岡。」


「はぁ・・・。」


そして、また笹岡と勝山は言い争いをしだす。


その中、はぎゅっと爪が自信の手に食い込むほど握り締める。


「・・・許せない


さらに手に力を入れる、手は血が少し滲んでいる。


「?!」


その手を、薬売りはやんわりと包み込み、


「手の力を・・・。」


その事で、やっとは自分が手に力を入れている事に気付いた。


「あっ、ごめん。」


薬売りは、頭を撫でちゅっと傷口に口付けると


「薬箱の中に薬が・・・場所は わかるだろ?」


「うんっ。」


は、自信で傷口の手当をして薬売りの横に戻る。


「よさんか・・・。」


勝山と笹岡の言い争いがぴたりと止まる。


「こんな時になんだ・・・。」


「ですが、ご隠居様。」


「黙りなさい。笹岡。」


二人の言い争いを止めたのは、ご隠居の伊行だった。


「二人ともその・・・なんだ。仲違いはやめてどうかどうすればいいか、そっちを考えて欲しいのだ。」


ぴたりと止まって動かない二人。


「坂井の事を考えて嫁いごうとしてくれた真央がそこにおるのだ。無様な姿は見せたくない。わかってくれ。」


その様な事を言われれば、反論など出来やしない二人。


「「はは。」」


と頭を下げた。












「今、何刻でしょう・・・?」


「さぁな。子の上刻か下刻か・・・。」


「もしかして、このまま夜が明けないなんてこと・・・」


「そんなことあるわけないでしょ!」


皆、疲れて敏感になっている様だ。


その時。


リン・・・。


天秤の鈴がなる。


その瞬間、ばっと薬売りとは立ち上がり周りを見回す。


「いかん!誰かが来たのかもしれん。」


そんな小田島に静止の声を掛ける。


「待って下さい。」


「誰かが尋ねてくる事は、有り得ない。」


「何故そう言いきれる?」


「私達の周りには結界があり。結界の周りにはモノノ怪の領分があるんです。」


「そこを越えて 人がやってくることは・・・ありえないんだ。」


薬売りは退魔の剣を、は扇を構える。


りん・りん・りん・・・


と次々に鈴が鳴る。


そして、札が赤に変わっていく。


りん・りん・りん・・・


音のする方向へと薬売りは、一緒に動いて行く。


は、皆を守るように周りに気を配る。


・・・。」


加世は、の袖をひしっと掴みながら心配そうに名前を呼んだ。


「大丈夫、何があっても・・・私が守るから。」


ばさっと扇を広げる。それは、見た目よりも大分大きい。


その時、水江が目を覚ます。


そして急に札が元に戻る。


「何?」


その時、真央の枕元の札が赤くなる。


水江は、真央の顔に掛けてある白い布を取り、また泣き出す。


「結界が!」


が叫んだ途端、部屋中の札が赤く染まる。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


水江は、狂気染みた叫び声を上げた。


「珠生が珠生がぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


その言葉に、部屋の者たちが目を見開く。


薬売りは、真央の顔を見ていると水江は、外に出ようと襖に向かって走り出していた。


それに気付いた薬売りとは、止めようと動いた。


が、薬売りは、真央に足を掴まれ動けない。


「駄目です!今出てしまっては、いけません!!」


「いやぁ!!珠生があぁぁぁぁぁ!!!!!!」


が必死に止めるが、水江はまったくその言葉を聞かず襖を開けようとする。


「奥へ!!!!!」


薬売りは叫び皆、奥へ移動する。


しかし、だけは水江を止めようとその場にいた。


!!早く奥へ!」


「駄目!!これ以上人を殺させちゃ駄目なの!化猫になってまで伝えたい何かがきっとあるの!!」


「きいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」


「水江様!おやめ下さい!」


水江は、を振り切ると・・・


バンっ!!


襖を開けてしまった。


そこには、夥しい数の猫に・・・。


「あの女の人は・・・。」


―――伊國様に触れたときに見えた・・・人?


そう思った時、は化猫に取り込まれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」




















・・・さん。さん。


―――っ・・・私、どうしたの?


ごめんなさい。


―――珠生・・・さん?


さん、ごめんなさい。


―――どう・・・して?私は、取り込まれてしまったはず。


さん、どうか。猫を猫を止めて下さい。


―――猫・・・化猫?一体何が?


猫は、私の為に・・・?!いけない!あなたの大事な人が危険です。


―――大事な人?!


早く戻って・・・。




















「きゃっ!・・・つっ。」


!」


薬売りは、一部屋ごとに仕切り札を貼り、を抱き抱える。


「薬売り・・・さん?」


っ!!」


そこに、加世が泣きそうな声で駆け寄ってきた。


「心配、掛けちゃったみたいだね・・・。」


は、自嘲気味に笑い言う。


「もう・・・馬鹿ぁぁ!!!!」


加世は、をてちてちと叩きながら泣き付いた。


「あれは・・・誰だ。あれが真の一部。理の形だろう。奥方は珠生殿と呼んだぞ。他は誰も 娘のことを知らないのか。」


がんっ!と部屋が揺れる。


「結界が・・・破られたね。」


「ここまですぐ来る・・・。」


「まっまだ抜けんのか!早く抜け!!」


「こいつに聞いてくれ・・・もっとも刀が抜けてもモノノ怪の力に勝てるとは限らないがな。」


「なんだと?!退魔の剣だと言ったではないか!」


笹岡が食って掛かる。


「剣を操るのは・・・人間だ。俺の技量には限界が ある。」


札が真っ赤に染まり消えていく。


「まだ奥に・・・逃げられる。」


そう言い、隠し扉をあける。


、お前は下で・・・」


「でも!薬売りさんは・・・?」


いいから、と目で合図するとはしぶしぶながらも肯き、加世や小田島と一緒に奥へ降りていった。










「すっごーい。」


そこには、球状の天井で真ん中に花嫁衣裳がある部屋だった。


加世と小田島は、感嘆の声をあげている。


「あっはぁははははははははは!!!無駄よぉ!!無駄無駄ぁ!!!どうやったって逃げられないんだわ!!」


さとの声が聞こえてきた。


入り口の方には、視線を移動させる。その時


「あーー!!!この花嫁衣裳!さっきモノノ怪が着てた!!!」


そう加世が叫んだ瞬間、花嫁衣裳は赤黒く変色し消えた。














































 













































あとがき



二の幕終了〜!!!!!!!


原作とは、少しだけ変わってます。


さぁ、次から大詰めです!どうなるさん!!!!!








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